ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。毎週月曜日21時更新です。その他のタイミングでも時々更新します。

灯しびとの集い

11月9日、大阪は堺で開催されるクラフトフェア「灯しびとの集い」に行ってきた。
同イベントは陶芸、木工、ガラス、金属、布などの作家さんが全国各地から多数集まり、自ら作ったものを自ら展示し、自ら売るという、とってもユニークなイベントである。
tomoshibito.org

出展者の数は実に100人。応募総数は600人ほどであったというから出展者は6倍の競争を経てイベントに参加している。有名な人もいれば、新進気鋭の方もいて、このイベントには多くのギャラリーが作家のハントにやってくるのだという。

その出展者の選考に僕の友人の木工作家が受かった(苔むす木工:東京都)。僕はそれまでそんなイベントが堺で行われていることも知らなかったが、その友人から来て欲しいと便りがあり、嫁さんも器を扱う仕事をしているので一緒に行ってみることにした。


当日は素晴らしい快晴だった。
JR阪和線百舌駅で電車を降り、世界遺産となった仁徳天皇陵の脇を通って大仙公園に入る。なんともすごい場所でやるイベントだ。
会場に着くと芝生の上に大量のテントが並んでいてその数にビックリした。こんなに多くの作家さんと直接やりとりできるイベントが大阪であったなんて。僕は会場に着くまで100人もの作家さんが参加しているということを知らなかった。

あまりのテントの数に友人がどこにいるかもわからず、端から順番にお店を見ていくことにした。お客さんの数もものすごい。そのため少し歩きにくいが一店一店見て回るのに変に緊張しないくていい。どのお店にも必ず誰かお客さんがいるからだ。店主と1対1、みたいな張り詰めた空気感にならない。野外のテントで開放的だし、それに接客慣れしていない作家さん自身がお店に立ってモノを売っている姿もすごく安心感があった。

嫁さんは器がとても好きなので、「あ、この人知ってる!」と言っては次々にテントの中に入っていく。僕もつられて入る。僕は器のことは全く詳しくないが、色や形や質感が作る人によってこんなにも変わるものなのかと改めて思った。
やたら人気の人もいて、僕らが行ったのは14時頃だったが、売れすぎてその時点で棚にほぼ商品がのってないお店もあった。
人をひきつけるもの、そうでないもの、一体何が違うんだろうか。

端の方にあった靴屋さんには僕も嫁さんもひきつけられて、嫁さんは皮靴を試着させてもらった。似合っていたが、値段が6万ということで、すぐに手が出せる金額ではなかった。いつか買えたら、と作家さんの名刺をもらって、嫁さんは連絡先を伝えていた。目の前にこれを作った人がいる、という事実だけで展示されているモノがとても素敵に見える。


僕の友人はテント群の真ん中あたりにいた。たくさんお客さんが入って盛況のようである。しばらく僕らに気づかないほどであった。
少し立ち話をして「景気はどうか」と聞いてみるとなかなかどうして悪くないようである。確かに木工の作家さんはお皿やフォークなど食器を作っている人がほとんどで、友人のように木のオブジェを作って展示してるお店は他には見当たらなかった。きっとお客さんの目を引いたに違いない。
それに友人の作るモノ自体もユニークで可愛らしいし、前見せてもらった時よりも種類がたくさん増えていて見ているだけで飽きない。あれがいいこれがいいなどと嫁さんと言い合って、その後友人と夜に飲む約束をしてその場を離れた。


展示をザッと一周見て回るのに1時間と少しかかったであろうか。僕にはモノ作りをしている作家さんがまぶしく見えてしょうがなかった。「これが俺の作ったモノだ」と実物を目の前に出せるのがうらやましかった。文章はそうはいかない。実物を目の前に出せと言われて出せるのはただの文字の羅列だ。「モノ」として見ると、そんなものに価値もくそもない。
薄々感じていた文章を書く人の「モノ(実物)がない」という脆弱さ、心細さみたいなものを灯しびとの集いに行ってより強く感じた。物書きも学校の先生も、どこまでいっても虚業なのだ。


もう一つ印象的だったのは灯しびとの集いに参加している作家の方が見る人見る人ことごとく若かったことだ。陶芸家てのは漫画『美味しんぼ』に出てくる唐山陶人みたいなおじいさんばかりだと思っていた。どっこいそんな人はほとんどおらず(多少はいた)、陶芸に限らず木工の人も金属の人も軒並み若かった。

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こんな感じの人はあまりいなかった。
しかも、なんだか溌剌としていてさわやかでスリムで理知的で、端的にイケメンが多かった。覚悟を決めて自分のやりたいことやってる人って皆あんな感じになるんだろうか。
『耳をすませば』の大ファンの僕が、灯しびとに集う作家さんと天沢聖司君の姿を重ね会わせたのは言うまでもない。作家さんたちは皆、聖司君の成長した姿だ。
僕もあんな風になりたい。


灯しびとの集いから色々な刺激をもらって帰路につく。

夜には打ち上げ的に友人と飲んだ。「来て良かった」とビールを飲みながら彼は始終微笑んでいた。

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皆、何かで闘っている。






↓この日記に出てきた木工作家の友人のサイトです。良ければ見てみて下さい。
www.kokemoku.com